アカデミー
努力した先にチャンスがある!
〜「第5回スタートアップリーグアカデミー」をレポート〜

第4回スタートアップリーグアカデミー

11月5日、都内にて「第5回スタートアップリーグアカデミー」が開催されました。

事務局から本日の流れについての説明後、現地に参加している採択者がそれぞれ自己紹介を行いました。

続いて、運営会合長の福田正氏があいさつ。スタートアップリーグは従来のピッチイベントとは異なり、その場ですぐに価値を高める「バリューアップ」を合言葉に、関係者とのマッチングやその先のビジョンの実現を目指す場であることを改めて確認しました。また、高市早苗総理大臣が総務大臣在任時に「私は異能の母です」と力強くコメントし牽引した総務省の人材発掘プログラム「異能vation」の成果を受け継ぐ形でスタートアップリーグが始まったことにふれ、その流れも踏まえたプラットフォームをつくっていくことの重要性を訴えました。

また、今期の米国プロ野球メジャーリーグ・ワールドシリーズでのドジャースの劇的な勝利を話題にし、「スポーツの世界は“筋書きのないドラマ”のようでいて、実は徹底したデータ分析と果てしない努力という大きなプラットフォームが根底にある」と指摘。一方で、山本由伸投手が世界最高峰の投手へと成長できたのは、怪我などで評価が分かれていた山本投手をかつてオリックスがドラフト4位で指名したように、スカウトされる側の「日々の努力」はもちろん、長期にわたって選手の情報を収集し、ポテンシャルを見極めて信じ続けた、スカウトする側の「絶え間ない努力」があったのだと話し、成功のあらゆる要素が組み込まれているスポーツに倣った、この「リーグ」もそうなれるよう引き続き努力を重ねていくと改めて決意を語りました。

さらに福田氏は「事務局任せにするのではなく、リーグに参加するメンバー全員が当事者意識を持って協力し、それぞれが協力者を積極的に募ることが不可欠である。」「この全員参加型の協力体制こそが、リーグを大きく拡大させるための鍵となる。」と仲間を積極的に増やしていく方向性を語り、「『スタートアップは日本』と言われる仕組みを作るには、リーグに参加する皆がどれだけ一生懸命に、この新しいプラットフォームを広げていけるかにかかっている」と強調。「中0日でリリーフ登板した山本投手のように、スタートアップはいつ声をかけられても、明日にと言われても投げられる状態を常に作っておくべき。言われたからやるようなレベルでは世界では勝てない」と参加者を鼓舞しました。

■セッション「スタートアップにおける人材活用の最前線」

今回のセッション登壇者は運営会合メンバーの一人、株式会社みらいワークス代表取締役社⻑・岡本祥治氏。プロフェッショナル人材のサポートを得られる同社の人材サービスの活用方法を中心に、事業の立ち上げのプロセスなどについて、事例紹介や自身の経験をベースに語られました。

株式会社みらいワークス代表取締役社⻑・岡本祥治氏

Point 1:「ライフワーク」への訴求がプロ人材活用の鍵

スタートアップが直面する開発リソース不足と資金調達の課題に対し、岡本氏は独自の外部人材活用を提唱しました。高額なプロフェッショナル人材を低コストかつ高いモチベーションで巻き込む具体的な方法論です。
地方副業プラットフォームでは、本業では月収300万円の経営コンサルタントが、謝礼3万円で15時間も協力してくれた事例を紹介。
仕事には、米を食べるため、つまり生活のために行う「ライスワーク」と、人生において成し遂げたいと思う、自己実現のための「ライフワーク」があり、優秀な人材は副業に「ライフワーク」を求めています。スタートアップ支援や地方創生に貢献したいという彼らの熱意に訴えかけることで、報酬以上の価値を引き出せると語ります。「使命感からスタートアップを支援したい人たちは多い。ライフワークの文脈で訴えることで、お金以外の価値で手伝ってくれる人たちが見つかるかもしれません」
これは単なるコスト削減ではなく、いかに相手のハートに訴えかけ、熱意で動いてもらうかという、経営者としての「ストーリーづくり」の重要性を説くものでした。

Point 2:事業立ち上げのきっかけに正解はない

次に、みらいワークスのさまざまな事業の立ち上げの経緯について紹介。同社の基軸となるフリーランス事業は、一般的なコンサルティングファーム出身の起業家が取るような、市場調査やROI(投資利益率)に基づいた計画からスタートしたわけではないという岡本氏の経験が語られました。
2007年のリーマンショック直後で困窮していたフリーランスの友人に、岡本氏自身に来た仕事を業務委託で再発注するという形で事業が始まったといいます。「市場がどうとか、ビジネスとしての価値とかは全く考えず、ただ単に困っている友人たちの笑顔が見たい。それだけで我々の事業はスタートしました」と岡本氏。
また、上場するまでクライアントマーケティングに一切予算を使わず、「外資コンサル出身者」をターゲットにした泥臭い「一本釣り」で成長した話は、スタートアップ初期にはお金を使わず、できることを考えて「愚直にやり切る」ことの価値を再認識させました。

Point 3:ビジョン実現への道筋は「最初から答えが出ていなくても走り続けること」

続いて、みらいワークスの地方創生事業と実践型リスキリング事業の立ち上げの軌跡がスケール感を持って語られ、ビジョン実現への道のりが決して直線ではないことを示唆しました。
2017年に上場を果たした後、岡本氏は「ライフワーク」に取り組めていないプロ人材の現実を目の当たりにし、地方創生とリスキリングの事業に着手。特にリスキリング事業は立ち上げから3年間、ほとんど売上が立たない厳しい状況でした。しかし、同時期にM&Aなどで急成長した地方創生事業が「地域の課題」というリソースを生み出し、その課題解決を通じて大企業の人材が成功体験を得るという、他社には真似できない「実践型リスキリングプログラム」へと昇華させることができたといいます。
「ビジョンの実現を考えたときに、最初から答えが出ていなくても、走り続けているうちに見つかることもある。ROIだけを見ているなら儲からないからやめることになるが、ビジョンの実現は最優先なので諦めたくない。それなら、あの手この手で考え続けることが重要」と岡本氏は自身の事業立ち上げの経験を踏まえて語りました。

まとめ

岡本氏のセッションは、スタートアップの経営者に「自分を売り込む」ことの重要性から、「お金以外のモチベーション」で有能な人材を巻き込むコツ、そして「ビジョンを諦めないで試行錯誤し続ける」ことの価値を、自身の具体的な成功体験と失敗談を交えて強く訴えかけるものでした。
最後に、岡本氏は「女神の法則×1万時間の法則」を紹介。「幸運の女神には前髪しかない(古代ギリシャのことわざ)。過ぎ去った後につかもうとしても遅く、チャンスは来たそのときにつかまないといけない。また、プロになるためには1万時間の修行が必要で、継続した努力があって実力が養える。成功は、この2つの掛け合わせなのではないか」と説明し、「チャンスにめぐり合うには運もあるが、努力を継続した先にしかチャンスはつかめない」と参加者にエールを送りました。
また、出身会社のアクセンチュアの同期280人中4人が上場、ベンチャー三田会290人中31人が上場経験者という数字を挙げ、「互いに切磋琢磨できる環境で経営することはとても重要だ」と力を込めて伝えました。ICTスタートアップリーグがそうした場になっていくこと、参加者への5年後10年後の成長に期待を寄せ、講演を締めくくりました。

■バリューアップセッション

株式会社フィッシュパス:世界の生物多様性ビジネスに貢献するインフラ企業を目指す

株式会社Blue Farm:お茶で企業も「健康に」

採択スタートアップ2社のバリューアップセッション。はじめに、川を中心に人と地域の共生関係を創造する株式会社フィッシュパス代表取締役の西村成弘氏が登壇しました。

事業概要と挑戦:
“日本一の川のデジタル網”として、全国の川を管理する漁業協同組合(漁協)と釣り人を便利にするアプリケーションサービス「フィッシュパス」を展開。デジタル遊漁券の導入や釣り場での安全確保、漁協の監視業務・魚場整備の効率化など、川を支える社会基盤へと成長しました。スタートアップリーグでは、たった一杯の水から生物多様性を科学的に見える化する環境DNA技術により、企業や行政の環境対策やESG経営を支援するとともに、世界の生物多様性を守る新たなインフラ基盤の構築に挑戦しています。

課題①導入に向けた説明コストの高さ:
これまで2029年の東証グロース市場へのIPO(新規株式公開)を目指して進めてきたが、本当にこの進み方でいいのかどうか。

課題②認知度の低さ:
環境DNA分析サービスは現時点で60漁協、大手6社、18地方公共団体での導入実績がある。また、海外ではカンボジア、タイでの実績を経てマレーシアでの調査も始まる。今後、どの産業分野・領域に集中してサービスを展開していったらいいのか。

課題③他業種との連携可能性:
方向性としては特殊データ取得技術の向上、解析技術の高度化、ユーザビリティの改善などが挙げられるが、サービスの上でどこを深堀りして開発していったらいいのか。

有識者からの金言:

有識者からの提案

福田氏は、環境DNA技術が熊被害という喫緊の社会課題の解決策になり得ると提言。行政やメディアからの要請が強まる今動くことで、大きな需要が見込めるとの見解を示しました。「今こそ社会的な期待に応えるべきタイミング」として、対策への注力を推奨しました。

運営会合メンバーの佐々木喜徳氏(株式会社ガイアックス執行役員)は「熊の目撃情報を元に地図に点を打っていく『くまっぷ』はすでに各地で作られていますが、これを企業のESG(環境・社会・企業統治)の取り組みとして、企業の力で河川を調査して日本全国の河川を使った『くまっぷ』を作るなど、熊情報一つとってもいろいろな展開ができそう」と事業展開の可能性を示唆し、選考評価委員の松田信之氏(株式会Booster Knob代表取締役)は「VC(ベンチャーキャピタル)目線で言うと、データの見える化に取り組むスタートアップで成否を分けるのは、見える化の次の展開までできるかどうか。熊の話だと、単に「この川にいるよ」というのが分かるだけでは意味がなく、一歩踏み込んで、釣り人向けに『熊の存在を確認できるチェックキット』を開発すれば、事業として十分に成立する可能性がある。」とマネタイズの視点で語りました。

西村氏はIPOを目指す理由を聞かれ、「『日本の川を守って未来につなげる』というビジョンの実現のためには、公的になることで市民に関心をより持ってもらえて、事業のスピードやパフォーマンスが高められる」と回答。

岡本氏は、仮に熊ビジネスで成功すれば資金調達が不要になる可能性や、社会的な信用がすでに漁協ネットワークで確立されている点から、IPOの必要性は低いのではないかと指摘。「IPOによる機関投資家からの利益追求の圧力を受けるよりも、社会的な貢献に注力するべきだ」とアドバイスしました。

トランステップ株式会社:AIを活用し、補助金情報を誰でもが利活用できる社会に

トランステップ株式会社:AIを活用し、補助金情報を誰でもが利活用できる社会に

バリューアップセッション2人目の登壇者は、外資系企業の管理会計部門でキャリアを積み、2024年に創業したトランステップ株式会社代表取締役社長の岡島礼氏です。

事業概要と挑戦:
採択された研究テーマは「AI技術を活用した補助金情報の非対称性解消とDX推進プラットフォームの研究開発」。国や自治体などから発信される膨大で多様な補助金情報を、企業の誰もが「簡単に見つけ、正しく理解し適切に申請を進められる」ようにすることを目指しています。これにより、中小企業の機会損失を防ぎ、課題解決への挑戦が可能となる社会インフラを構築します。2025年7月、補助金DXソリューション「トレテル」ベータ版の提供を開始しました。

課題①ビジネスモデルの方向性:
補助金を営業活動に活用している大手企業などを対象に有償アカウントを販売しているが、そもそもPMF(プロダクトマーケットフィット)に至っておらず、バーニングニーズがどこにあるのかを特定した上で、ビジネスモデルを組み直したい。

課題②ヒアリングのターゲット層へのアプローチ:
「トレテル」ベータ版に関して、企業のニーズを満たし価値を出せているのかを検証するため、ヒアリングのターゲットを定めている。どうすればその層と接点を持ちヒアリングが実施できるのか、アドバイスがほしい。また、ヒアリング先として、補助金を営業に活用している企業、または自社で活用している企業を紹介してほしい。

課題③無償アカウント利用者を増やしたい:
無償アカウント800件と有償アカウント5件の契約件数を達成するという目標を立てていたが、特に無償アカウントについては現時点で72アカウントと、進捗が遅れている。今回や過去のリーグ採択者にも無償アカウントを使ってもらうことで、さまざまな視点でのフィードバックをより多く得たい。

有識者からの金言:

運営会合メンバー、選考評価委員からの提案

福田氏は「大企業向けに1件1件有償で販売することは難しいのではないか」と現状のビジネスモデルについて言及。みらいワークスの岡本氏もアカウント単価での商売については同意見とする一方、「BPO的支援の視点で、補助金の申請代行や事務局側のオペレーションの自動化プラットフォームなど、特定の会社に高単価で導入してもらうことで収益化できるのでは」とアドバイスしました。
松田氏は「補助金申請を支援する社労士など、士業の人たちにとっていい商品になる」と大企業とは別のターゲットがあることを示唆し、選考評価委員の小林寛幸氏(デロイト トーマツ ディープスクエア株式会社代表取締役社長)は「申請書の自動作成までできると利用価値が上がると思う」と、ターゲットごとに必要な機能を振り分けることでビジネスチャンスが広がることに期待を寄せました。

一般の個人向けの補助金も含めサービスを完全無料化し、数千万人規模の圧倒的なユーザー数を確保すれば、広告収入などでキャッシュポイントが生まれる方向性でも議論は進みました。ゲストの杉山浩一氏(日本エンタープライズ株式会社専務取締役)は「誰でも補助金を取れるようにするという本来の目的で考えるなら、無償でサービスの間口を一気に広げるビジネスモデルの方が合っている」と話し、福田氏は「携帯キャリアなど、母数を取れる巨大プラットフォームと組んで、ユーザーを多く獲得できれば可能性はある」と総括しました。

■イベント総括
アカデミー終了後の交流会では参加者たちが名刺交換とともに、今回の振り返りや具体的な支援について活発な意見交換が行われていました。

バリューアップセッションに登壇した株式会社フィッシュパスの西村氏は、「全く違う目線の高さから、こちらの想定を(いい意味で)破壊されました。まさにこれがバリューアップなんだと実感しました」と話し、他のアクセラレーションプログラムやビジネスコンテストでは経験したことがないリーグの“破天荒さ”と熱量に驚いた様子でした。

2人目の登壇者のトランステップ株式会社の岡島氏は「事業をプレゼンするだけでなく、幅広い領域の有識者からその場でフィードバックをもらえる機会はとても貴重でした。今後のサービスの方向性をしっかり考えていきたい」とバリューアップセッションで繰り広げられた熱い議論を振り返りました。

スタートアップリーグ全体の感想として、佐々木氏は「さまざまなフィールドのメンターが、それぞれの専門性での視点で意見を出し続ける場となっているのがよかった」と話しました。リーグでは必ずしも一つの結論には収束せず、複数の方向性の意見が次々と出されます。参加者の挑戦をサポートする幅広い土壌があることで刺激的な議論に発展しやすく、そこから新たな一歩を踏み出すアイデアが生まれます。

また、福田氏は「アドバイスに対して、すぐ動くのかどうか。やるのか、やらないのか。チャンスをつかめるかはそれだけにかかっている」とコメント。事業を成功に導くための瞬発力、スピード感が大切なことが伝わってきました。

リーグアカデミーの場でもたらされる熱い議論から生まれる新たな挑戦に、今後も注目が集まります。

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